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『エターナル・サンシャイン』(79点/100点満点中)

 どんな風に失恋したかが、その人間のその後の未来を履歴書や経歴書よりも正確に決定づけてしまう。一度負った傷は治っても、痛まなくても、それを無意識に引きずり続けてしまうのである。たとえそれが、初恋の傷ではなかったとしても。そしてそれは明らかに地獄だ。そうだ。失恋は間違いなく地獄なのである。
 もう相手に思われていないのにこちらは思い続けるほど残酷なことなんてないのである。

 失恋を忘れる方法はないのか。
 そんな永遠のテーマに、ほとんど決定的な解答をもたらした恋愛映画の傑作がこれである。
 この映画を見て心動かされた者同士ならば、初対面でも一瞬で信頼しあえると言っていい。それくらい入り組んだ脚本と、突飛だが美しい映像が満載で、あと半世紀以上はこの映画の真実性は担保されたと言ってもいい。

 実際本当に鬱病になったこともあるコメディ王のジム・キャリーが主演を演じる。
 ジム・キャリーにもはやマスクのような笑い顔はない。それが失恋をテーマにするということである。

 彼のもう死ぬんじゃないかというほどに鬱チックな独白はロマンチックで、このおかげで男が真剣に見入っても損はない恋愛映画に一気に仕上がった。

 失恋を忘れるための記憶処理手術を受ける彼。
 彼の元恋人もすでに受けたのだから、自分もさっさと忘れて楽になってやろうとする。

 施術のために眠りに落ち、そうして出会った頃の記憶、彼女のセリフ、セックス、まだ可愛かった頃の彼女、喧嘩、二人で行った冬の湖などの記憶に強制的に立ち会うことになる。別れた後は、誰もがやってしまうことである。
 しかしだんだんそれらが鮮明に思い出せなくなる。手術の成果なのだ。術中の彼の頭の中は、たとえば本のタイトルがすべて消えてしまった本屋、そんなことが起こるはずがないのに上階から溢れ出して崩壊しそうな廃墟など、混在してはすべてが壊れていく美しい心象風景でごちゃごちゃになっていく。

 そうして現実へと回帰するまでの、かさぶたを剥がすような悲喜の繰り返しで、やがてその記憶の掛け替えのなさに気づき、さてどうするという映画である。

 なにかを忘れたい、と思った時点で、もうそれは忘れられない。
 それでも忘れたい時、あるいはそれと生きていきたいと思えるようになるには、どうすればいいか。
 
 そのヒントを撒き散らしたこの作品はすべての失恋者に贈られたギフトである。
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