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『モテキ』(98点/100点満点中)

 好きな人には好きな人がいるという、この普遍的な、そして日常的で絶望的な出来事は、一人の人間を最高に卑屈にするのに十分過ぎる条件である。
 そしてこの映画はその絶望と真っ向対峙してみせた。
 あるいは、サブカルだサブカルでないだのくだらない議論にすら終止符を打って見せた。

 モテまくるのは気持ちいい。だが好きな人にモテないなら、なんにも意味がないことは、誰もが知る通りである。
 そして単なる恋愛映画ほどつまんねえ映画はない。単なる音楽最高とのたまう映画ほどつまんねえ映画はない。

 これらの危険な領域に踏み込んで、その全てにおいて完璧に勝利して見せた。ここ十年で一番面白い邦画はなにかと訊かれたら、私はこの映画だと、即答する。

 ただでさえ童貞が走ると映画になる。
 ただでさえ童貞が失恋すると映画になる。
 ただでさえ童貞が童貞らしくあるだけで映画になる。
 そこに長澤まさみやら真木よう子が出てきて、森山未來を翻弄する。
 
 『世界の中心で愛を叫ぶ』のサイドストーリーだと思ってみると面白さは倍加する。
 森山未來は長澤まさみへの惚れ方と長澤まさみの失い方がギネスクラスで上手い天才なのである。

 主人公は音楽ライターであり、自意識過剰であり、シャイであり、であるが故に、部屋には好きな音楽CDとTENGAの転がるどこにでもいるめちゃくちゃ面白い男の子である。
 そんな彼にモテ期が訪れた。ツイッターでなんとなく趣味が合い話しかけてヴィレヴァン前で待ち合わせた女の子は実は長澤まさみだったのである。

 なんとなく文章しか知らないような人の見た目が実はめちゃくちゃ自分にとって最高だった、ということは事実よくある展開なのである。
 そして酔う。まあそういうことになるよなあという展開があり、森山未來は彼女と自室でふたりきりになる。童貞をこじらせまくった森山未來は長澤まさみとキスをする。が、それ以上には行けない。そうしてまた会おうねと別れた駅前、森山未來は叫ぶ。これは、モテ期だ、と。

 この絶頂シーンは邦画史上最も情けないのに最も共感できる最高のシーンだ。
 そこからパフュームが街中に踊り出てくるシークエンスなどは、幸せな『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を見ているかのようで爆笑できる。

 そうしてツイッターストーカーになる森山未來の痛々しさと言ったらない。
 なんだかんだで悪質なオッサンを演じるリリーフランキーのセックストークもキレッキレであり、欲しいとこにパーンって来るでしょという台詞、そしてあの牛丼シーンは、映画史上一番美しい牛丼シーンとも言えよう。

 劇中の音楽の使われ方も良い。

 しかし、長澤まさみには恋人がいる。
 恋人がいるのにそういうことをしてきた森山未來はそれが許せない。
 そうして拒絶される。それでも諦められない時、人間ができることはなにか。莫大な笑いをもたらして、一瞬にして真剣なテーマになり、森山未來がその醜さも美しさもすべて爆発させてフィナーレを迎える。

 これは映画ではなく、お祭りのようだが、お祭りのような映画がこんなに面白いのはひとえに森山未來がアグリーで性欲にまみれた、もうどこにでもいるような純情な男を演じたからだ。
 なんて素敵な男なんだろう。森山未來が出てくる映画ならとりあえず金を出してもいいと私はこの映画を見て思った。
 
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