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『ブラック・スキャンダル』 (69点/100点満点中)

 暴力団と聴いて私が思い出すのは、街中で友人と電話していた際、偶然そこがそういう人たちの事務所の前で、敵対組織の鉄砲玉か警察と間違えられて事務所まで連行させられそうになった思い出と、そしてもう一つは、阪神大震災発生当時の記憶である。街のすべてがコンクリートの撒き散らされた焼け野原になった時、公園で食事を真っ先に提供してくれたのは自衛隊でも市井の人々でもなく、明らかに自衛隊でも市井の人々とも思えない、そういう人たちだった。
 日本最大のそういう組織が根付いた神戸に生まれ育つというのは、彼らの悪質な善を一度引き受けざるをえないような環境で育った、ということでもあるのだ。

 映画『ブラックスキャンダル』は旧知の三人の友人が、一人はギャング、一人は警察、一人は政治家となり、仲良く街を牛耳ってやばいことになるという実話映画である。
 物語は関係者の自白ドキュメンタリーの体裁を取り、これが実話だったのだという事実を補強する。
 子供向けの映画が演技の本領となっていたジョニーデップに、些かの不安を持っていたが杞憂だった。『ディパーテッド』のジャック・ニコルソンのモデルとなったまさに悪の百貨店のような人物を、青い瞳で、モゴモゴと話すジョニーデップが好演する。

 このジョニー・デップはまず情に厚い。親はもちろん、子供も、近所付き合いも、友人も大事にする。そして縁を切る時は事実相手の首も切り落とすような割り切りのよさである。ウチとソトという概念が強靭であり、見ているこちらがむせかえるほどに人間臭い。
そのどちらでもない、信用できるかできないかが測りかねる人物に対しては、たとえば食事中などに容赦なく怖い話をする。そして引き攣った相手の顔を見て、その圧倒的な自分の優位と相手の劣位・度胸のなさに対して爆笑する凶暴なシーンだけで鑑賞料金の元が取れる。まさに暴力団の処世術を学んでいるかのようだ。

 この全方位的な愛と脅迫と殺人とが、この悪役の魅力を支えていて、どうしたって好きになってしまう。

 彼を利用しながらも、彼にやがて逆らえなくなる警察官の友人の微笑ましい、しかしなぜかどこか痛々しい成功への執念は、悪にも善にもなれない一般人の小市民的な夢が詰め込まれており、一筋縄ではない。悪への決して叶わぬ片思いを見ているようであった。ベネディクト・カンパーバッチはなんだか忙しかったとしか思えないくらいちょっとしたか出てこない。

 ジョニーデップの青い瞳は美しい。
 もうこういう悪役以外演じなくていいと思う。
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『イット・フォローズ』(70点/100点満点中)

 最も怖いものはなにかと訊かれた時、いきなり出てくるものか、たまに出てくるものか、あったはずのものがなくなっていた、とか、ないはずのものがあるとか、抽象的に答えたとしてもその有様は無数にあるものである。しかし、「逃げようと思ったらその場では逃げられるが、ずっと同じ速度でゆっくり追ってくるものが一番怖い」ということをこの映画は華々しく暴いて見せた。
 死はいきなり訪れるのではなく両脚が運んでくるものなのである。

 映画『イットフォローズ』は超低予算で制作され単館上映だったものがタランティーノ絶賛というタイミングでその知名度が爆発し、こうして日本では六本木の映画館でも上映されるに至った映画であり、公開最終日上映会も満席だった映画である。

 セックスを共にした男に失神させられ、ふと目覚めたら廃墟の車椅子に縛り付けられている。
 「これから見せたいものがある。ちゃんと見ろ」と男は言う。
 すると遠方からゆっくりと女らしき人間が歩いてやってくる。
 「それに追いつかれると死ぬ。それはどんな人間の形にも変わって、歩いてやってくる」と男は言う。
 そして主人公女性のたった一人の、最悪の逃避行が始まるのである。

 セックスをすれば「それ」は相手に移すことができる。しかし「それ」が相手を殺してしまえば、また自分を追いかけてくる。この縛りを作ったのはまさに監督の最高のキレである。
 貞子さんや伽倻子さんもびっくりな、死の納期が決まっていない罰ゲームに主人公はそうして翻弄される。確かに一時的には逃げられるのだが、逃げても逃げても、距離は、それが歩けば歩くほどいつか必ずゼロになる。

 この前提でさて主人公どうすんのと楽しむ映画である。
 監督は「それ」は性病ではないという意味の発言を残している。
 大変素晴らしい発言である。じゃあ「それ」とはなんなのか。神か。過去か。自意識か。

 同性と見ても異性と見ても楽しめる屈指のホラー映画だった。

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