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『ヒメアノ~ル』(60点/100点満点中)

 映画の最後に映画のタイトルコールを入れてくる映画には傑作が多い。『ゼログラビティ』なんかがそうである。
 しかし本作は、洋画も邦画も恐らくやったことのないタイミングで劇中にタイトルコールを入れてくる。上映時間が中盤に差し掛かったタイミングで、いきなりそれまでのラブリーで平和でコミカルな展開が終わりを告げる。そしてタイトルコールが入って以降、雰囲気は百八十度暗転し、ラブリーな脇役の物語から、それらを皆殺しにしようとする凶暴な主人公へと物語が移行してしまうのだ。
 その型破り度は、演出だけにとどまらない。
 殺人鬼を取り扱った邦画の近似作品では『殺し屋1』や『隣人13号』が極めて異質で上質なサイコキラーの物語だが、それでもその怨恨や欲望の背後にはなにかしらの理由を抱えたいたのだが、この映画のサイコキラーは「あー焼肉食いてえ」のような軽さで人を殺す。殺す。殺しまくる。そこにはなんの計画性もない。
 その殺人鬼をジャニーズが演じた事件性は極めて高い。ジャニーズはどうしてサイコキラーを演じさせるとあんなに光り輝く人が多いのだろう。
 この映画では学校でいじめられながら自慰行為に耽って絶頂しそうになっている史上初のジャニーズが見られる。人を殺すジャニーズはまだ前例があるが、それでも口を開けば社会への諦観を平然と語り尽くし、旧知の友人相手に「お前にも俺にも未来なんてねえよ」と半笑いで言い放つ、前歯が欠けたかのようにどこか知性も希望もなにもかもが欠落した怖さを出せるのは、どことなく軽い主演のイメージにぴったりだった。

 ムロツヨシも気色悪い。濱田岳も気色悪い。
 しかしそれらを足し合わせても主演のジャニーズの気色悪さが圧倒する。
 近似値のサイコパス邦画と比較すると、それでもまだ痛さの訴求はR15級でグロテスクではない。良心的である。
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『ディストラクション・ベイビーズ』 (75点/100点満点中)

 刺し殺す、という話は聴くが、殴り殺す、という話は滅多に聴かない。だから刺し殺されることはあっても殴り殺されることはおそらくはありえないというのが現代人の肉体感覚の根底にある。ナイフに頼らずに手だけに頼るほどの原始的な殺意は、持つことも持たれることも、もはや想定しがたいからだ。しかしその想定を、この映画は覆す。街中ですれ違った人間に、本気のフィストファイトをなんの予告なく浴びせる狂った通り魔(柳楽 優弥)が本作の主人公である。
 殺さず、ただ殴り、痛めつけきったらその場を去る。家はない。そもそも家には帰らない。そしてまた次に出会ったものを殴る。向井秀徳の五線譜を外れたギターの音が爆音で鳴りながら、主人公は街中を昼とも夜ともなくぶらぶらと徘徊する様子をただ背後から追うその十数秒のシーンだけで本作の鑑賞コストの元は取れる。余りに不気味なのに、爽快なのだ。真夜中クラブに行った時に、フロアの真ん中で激しく踊る人間を見て思わず目が釘づけになる、あの感覚に近い。時にひどい返り討ちにあっても彼は死ぬことはなく、再び獲物を探す。
 そしてこの暴力王に心酔した若者(菅田 将暉)が彼と行動を共にしてしまうことで、事態は最悪になっていく。

 極めて即物的な描写が続く。殴って殴られて殴り返して終わり。なにも残らない。しかし、相手には間違いなく彼が襲ったという痕跡が残るのだ。これは単なる暴力なのか、乱痴気なのか、それとも捻じ曲がったコミュニケーションなのか、あるいはソクラテス的な問答なのか、宮本武蔵的な修行行為、キリスト教的な洗礼行為なのか、やはりまったくの無意味なのか。解釈を手伝うような主人公の台詞は劇中、一切ない。というかまったく主人公はしゃべらない。そしてその凶行には最初から何の迷いもないのだ。
 語られえないことは、語れることではないのだろう。
 あたかも手紙を送るように人を無言で殴り、返信を読むように無言で殴り返される行為が、一体なにを意味しているかの妥当な解釈をやっと持てそうになった時にはもう劇中の事態は取り返しのつかないことになっている。それらのすべてはもう一人の若者の関与によって形成、拡大される。その推移はいかにも今っぽい。炎上がやがては報道を招き、報道が実質的な社会的制裁を、つまりは警察の出動する事態を招き、彼らの逃避行は不可避となる。それでも主人公は、まったく態度を変えようとしないのだ。

 主人公はそれらしい理由と最初から無縁で、観客のいらぬ解釈をも拒絶する。
 非常にシンプルだが、難解な映画で、引っかかる映画だった。

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