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『怒り』(90点/100点満点中)

 映画『シン・ゴジラ』『君の名は。』の映像的な派手さやファン層の絶賛に押されて、一向に目立たないことになっている映画『怒り』は邦画悪役史を塗り替える傑作かもしれない。
 ある八月の暑い日、閑静な住宅街の一軒家で夫妻が惨殺される。被害者の血で犯人が現場に残した『怒』という文字。警察は指名手配を開始する。しかしその殺人犯は逃亡したまま一年間検挙に至らない。そして千葉・東京・沖縄に、その殺人犯とそっくりな顔を持つ三人の男が現れる。
 殺人犯は、松山ケンイチか綾野剛か森山未來である。黙って突っ立っているだけでただでさえ怪しいこの三人は、劇中では寡黙だったりシャイだったりゲイだったり秘密主義者だったりと見るからに怪しい。『デトロイトメタルシティ』・『日本で一番悪い奴ら』・『セカチュー』を演じてそんなパーソナリティをされたら怪しすぎるのだ。だからもう疑わざるを得ない。こちらとしては探偵にでもなった気分でこの三人の内の誰が殺人犯なのか、その横顔や行動や発言の綻びからなんとか判断しようとする。しかし犯人は一人なのだ。逆を言えば犯人ではないのに犯人のように扱われることになるのは、このうちの二人なのである。誰が犯人か、もしくは実は誰も犯人ではないのか、いや、誰も犯人でなければいいと思わせる丁寧で狂暴な誘導は劇中随所に現れる。
 妻夫木聡と綾野剛とのセックスシーンは見事。それが同性愛であることを忘れさせるほどだった。この二人は痛々しいほどエロい。清楚が売りの宮崎あおいは冒頭から歌舞伎町の風俗嬢としてメンタルが壊れきっている。現在進行形で純粋無垢の代名詞となっている広瀬すずは端的に言って、沖縄で起こりえることとしては最も酷い目に遭う。あたかもそれぞれの俳優がそれぞれのキャリアイメージに元から怒り狂っており、この映画を通してそのキャリアの全破壊に挑んでいるかのようだった。登場人物のほとんどは怒り狂いながら、泣き叫びながら絶望的な結末を迎える。人を信じたから。あるいは、人を疑ったからだ。じゃあ結局人はどうすればいいのか、どうすればよかったのかという人生訓のような回答をこの映画は用意しない。そこに邦画の可能性を見た。重厚にして爽快なバッドエンドである。
 冒頭に述べたとおり、この映画の最大の魅力は、この映画の殺人犯である。『スーサイド・スクワッド』で悪に悪を期待して裏切られた映画ファンは、『ダークナイト』のジョーカー以上の普遍的で最悪な悪をこの映画で目の当たりにすることになる。ほんとうの殺人とは、人を殺すことではなく、人の不幸を笑いながら見ている、どこにでもいるような人間の行為なのかもしれない。
 デートには絶対に適さない。家族で見に行くのも絶対に絶対に適さない。そんな邦画がこれからもたくさん現れることを祈る。
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