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『君の名は。』(65点/100点満点中)

 映画の秋、読書の秋、食欲の秋といわれるが、秋でなくても、映画は見るし読書はするし腹も減る。ロックは死んだと言うような人間はただ今のロックに付いていけなくなっただけだろう。いつの時代もなにかは勝手に始まるし、誰かが何かを殺そうとするし、それはいつの間にか死ぬし、実はまだ死んでいなかったりする。
 『君の名は。』は東京に在住する男子高校生と田舎に在住する女子高生の身体が、ある日突然入れ替わるラブコメの体裁をうまく取っている。互いの姿を男女は見たことがない。しかしスマートフォンやアプリを通してコミカルに、そしておよそ他人とは決して言えないほどの精神的繋がりを獲得する二人はまさに現代的な恋愛の変遷を辿っていく。言葉だけで繋がっている我々は、言葉だけで飽きたらず、会おうとする。しかしこのふたりは会えない。なぜならすでに一方は...。
 予告編で観客が認めたあの美しい異常な天体現象が、本編では一瞬にして観客を鬱にさせる要素となる洒脱でアクロバティックな展開はまさに監督の妙味。いつまでも好きな人がいるのに忘れられない主人公を描いた『秒速5センチメール』になんのハッピーエンドも残されていなかったことや、日本人なら誰もが脳裏で一度は握りつぶして忘れようとしたあの情景を、この映画はたった一瞬間で感情的に復元させ再起させ追体験させ絶句させる。俯瞰的に、そして穿った見方をするならば、と同時にこのファンタジックな天体現象は、ジブリ的な懐古主義・自然主義にも文字通り隕石を落として一旦破壊しようとするのである。その思い切りの良さたるや、おそらく東京を愛してやまないこの監督の狂気と覚悟を感じた。
 一方で、この監督は途方もなく優しい。LINEの履歴が消えれば、親指ひとつ動かせば、相手とつながっていた証拠も、これからつながる可能性も永久に消去できる時代を、あの恐ろしいほど綺麗なアニメーションで鮮やかに描く。そんな現実的な悲惨を前に、主人公は携帯で誰に宛てたわけでもないメールを打つ鬱展開に自らを貶めない。戦うのである。携帯電話がなければ恋愛もできないような時代でも、ただ、「会う」ということがいかに大変かという主題にこの映画は真正面から戦う。その勇気が素晴らしい。
 まさにプラネタリウムと同程度の値段で、プラネタリウムのような映画を味わいたいと思うならば打ってつけの映画だった。恋愛映画を見倒しているような重症な映画ファンにとってはこの映画の恋愛要素に新規性はないが、それ以外の要素に、事件性は十分あるといえる。
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