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『花とアリス』(75点/100点満点中)

 なんかよくわからないけどタメになりそうな話を延々と語ってくる年上の男とか、別に嬉しくもない贈り物を嬉しそうにしてくれる女の無邪気な顔とか、うまく笑えないし怒れもしない後にふと出たくしゃみに自分で笑いそうになる、とか、どれも痛々しいほど日常的な、どうしようもない光景なのに、映画や小説にすると、たいていこれは、ごっそり抜け落ちてしまう。
 おそらくそれは、ひとつの劇にするには、あまりに淡いか、あまりに愛おしすぎるのである。
 そんなごっそり抜け落ちたものを丁寧に文章化したのが、俳句や短歌の世界の領分だと私は考える。大したドラマではないが、明らかに日常の一部を築き上げている脆い鉄骨のような淡い喜怒哀楽。愛してる愛してないの話ではない。激烈なものではない。これから起こることは、おそらくそんな原色からは程遠い、薄くて淡い話なのだ。

 『リリイ・シュシュのすべて』、で、この世で起こる悲惨な出来事のほとんどすべてを描いた監督は、この世で起こるなんてことのないことすべてを本作で描いている。
 好きな人の好きな人が自分の親友だったらどうするか。15歳前後の女子高生ふたり、鈴木杏と蒼井優は、同じ男を好きになってしまう。

 鈴木杏というどこまでも人工的で演劇的な動き方をする女優と、演技してるかしてないかまったくわからないしついでに言うと化粧水とか塗ってんのかどうかもわからない蒼井優とが、制服着て桜の下、べらべらしゃべりながら歩くだけで映画になると気づいた岩井俊二はやっぱりこの短歌的な文法で映画を撮ると天才なんだなと思う。

 ああそういえばそうだったなあ、青春ってあんな感じでだるかったなあ、でもハッピーだったなあ、と柔らかく思い出せる映画だった。
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