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『10 クローバーフィールド・レーン』(40点/100点満点中)

 なんだかいきなりよくわからないものがやってきて、とりあえず走って逃げたが、結局それがなにかは分からず、誰も助けてはくれないまま、街はぶっ壊れ、逃げ場もなく、泣き叫んでいる内にナイフで切ったように世界も登場人物も終わる前作『クローバーフィールド』は、なんだかよくわからなくなりたい土曜の夜九時になんだかよくわからない人と見たい映画としては間違いなく傑作だった。世界はやっぱりこんな風に滅亡してほしいと思う人類の気持ちを母のように抱擁し、あるいては少年のように純粋に楽しもうという気にさせてくれる夢のような映画であった。
 その次回作が本作である。同じような演出はもう通じない。だからといってそれはやっちゃいかんだろう。ということをまっすぐやってしまったのが本作である。
 郊外を車で走行中、トラックに突っ込まれて失神したミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は目覚めるとどこかの地下室に閉じ込められている。そこに現れた元軍人の大男・ハワード(ジョン・グッドマン)は、「もう二度と地上の世界に戻ることはできない」「なにもかもが終わった」「おまえはこのシェルターで暮らしたほうがいい」と繰り返す。その地下室に地鳴りのように響く、正体不明の轟音。そして同じく閉じ込められた、一人の若者。ミシェルはそのシェルターからの脱出を試みるが...。
 メアリー・エリザベス・ウィンステッドは見れば見るほどに愛おしくなる顔をしている。 『ファイナル・デッドコースター』『デス・プルーフ in グラインドハウス』『遊星からの物体X ファーストコンタクト』などここ十年間ずっと死そのものや変なおっさんや物体Xに追い込みをかけられ続けた輝かしいキャリアで、本作でも惜しげもなく披露される恐怖にのけぞる小動物のような叫び顔は超チャーミング。うわあがんばれがんばれと叫びたくなる感じにさせられる。
 しかし、だ。やっちゃいけないことを脚本はここでやる。
 たとえば傷もまだ癒えない間にミシェルは最初の脱出を試みようとし、ハワードに見つかってしまう最初のシークエンス。我々は一作目で自由の女神の頭部がパーティー会場前まで吹っ飛んでくるすさまじいサプライズに曝されたわけであり、デブのオッサンが近寄ってくるそのブーツの足音だけではもうちっともビビらなくなっている。この鼻息荒いデブのメンヘラは、まともなようでいてまともではなくギリギリのラインで信用できる人物なのかそれともただ監禁がしたいだけの人物なのか、その疑惑を終始メアリーに投げかける。だが、我々の脳裏には常にあのカマキリのような宇宙人の姿がある。デブのメンヘラのおっさんは怪しいが、宇宙人ほどではない。そういう理性の鬩ぎ合いがむくむくと沸き立っては収まるのを我慢していると、人生のうちの九十分を無駄にしてしまうのである。
 デブのメンヘラオッサンが襲ってくる物理的な恐怖と、外を出ても何が起きるかわからない精神的恐怖は、上手に混ざり合って主演の表情をくるくると変えていく。それはそれで楽しい。とはいえ偉大な傑作である前作のその後の話として、この脚本上の一つの大胆な裏切りを母のように許せるか、少年のように許せないかで、この映画への評価は大幅に変わってしまうかもしれない。
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