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『ゲルマニウムの夜』(70点/100点満点中)

 前科七犯のような瞳をした邦画俳優といえば新井浩文ということで結論は出ている。
 本作は殺人犯として逃亡し修道院に流れ着いた新井浩文が、ソドムの市を追い越せと言わんばかりに、雪の降り積もる景色の中、不可罰になることを知りながら純粋な悪意で白犬を蹴り飛ばし修道女を犯し神父を言葉攻めし上司に吐瀉物を食べさせるなど、悪虐冒瀆の限りを尽くす映画である。

  清々しいほど最低な主人公なのだがなぜか最低に見えない。暴力はたいてい不合理、時として合理的だが、この主人公のそれはすべて不合理なのである。おおよそ自分の快楽のために行われていない。

 つまるところ神学校というものに一度でも触れて気が触れそうになったことがあるならやってみたくなることを、すべてこの主人公がまっすぐに代行してくれる。
 暴力が反宗教的理由で観念され実行されるのは邦画でも相当珍しいのではないか。さらには暴力の主体がとても知的で自覚的でもあるというのも非常に珍しい。

 雪景色の中、立っているだけで次になにをするのかまったく予想がつかない新井浩文の存在感は、それまで彼が演じてきた悪役の中でも群を抜く。
 なにをやろうとしてもその直前まで表情を一切変えないためか、彼がなにかを目の前にして蹴るのか噛みちぎるのか犯すのか殴るのか、先が見えないのである。特に告解室での神父との問答は白眉だ。この主人公は、被虐や加虐をすればするほど、基督と悪魔の間を揺れ動き、だんだんと人間に接近してしまう。

 重要な登場人物が匂いに固執する演出は原作譲りなのだろうか。
 極寒の地では体温よりも先に嗅覚が失われるとして、養鶏場や吐瀉物や足の匂いといった最も汚れたものに罰のように突進していく主人公は、まず共感されることはない。であるがゆえに、神だけが彼に共感でき、彼だけが神に共感できる、鋭角な不等辺三角形のように歪な構図が見えてくる。倒錯した映画が見たいというとき、この映画を選ぶのが正しい。
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