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『ロブスター』(50点/100点満点中)

 恋愛禁止というルールを持つサークルだと知って、ああこれこそが私の求めていた集団なんだと喜び勇んで入会したのに、実はその部長がサークルの一年生と付き合っている上に会員五十名の中にカップルが10組以上いるという事実に入会三週間で気付いて絶句して退会したことがある。
 童貞ほど精神性に於いてストイシズムのある人種はいない。ありとあらゆることに恋愛が障害になると考えていた私は当時十八歳の可憐な童貞、いや、乙女であった。それから少なからずの年月を経て、いまやありとあらゆるものが恋愛の障害になる、そんな乙女の最果てのような考えを持つに至ったわけである。愛って怖いね。いやん。

 結婚できない者は、男女ともに強制収容所に入れられ、そこでパートナーを数週間以内に見つけられなければ動物にさせられるという設定が本作である。
 結婚できない場合には、夫妻のどちらかが先立ち片方が未亡人になった場合も含む。
 当然その施設にも逃亡者が出てくる。しかし施設管理者の命令により収容者はその逃亡者を殺すことで、施設滞在期間を数日伸ばすことができる。つまり人間としての終期を伸ばせるという仕組みである。
 そんな超ディストピア設定が非常に牧歌的な田舎の近代的な城の中で行われる。自殺する者。泣き叫ぶ者。ひたすら逃亡者の抹殺にだけ打ち込む者。パートナーを見つけて、支給された娘と三人暮らしを始めるカップル。ちなみに街中では警察がうろつき、一人で歩いてる人間には「おまえはまさか独身じゃねえだろうな」と職質を掛ける徹底振り。施設内自慰行為禁止。しかしセクシーなメイドが毎朝勃起だけさせに部屋に来て勃起させたまま部屋を後にする。

 まさに痒いところまで手の届いた国家設定の異様さは、しかしその国家思想と相反する草の根組織の登場によって重層的になる。その集団はレア・セドゥがトップを務めているのだが、彼女の敷いた集団への規律もやはりまた異常なのだ。人目のつくところでキス禁止、音楽聴くの禁止、二人で踊ったりするの禁止、と、日本赤軍派クラスのシャイな乙女集団となっている。ディストピア世界はどこに行ってもディストピアだが、さてこの主人公が行き着く先はどうなるか、という話である。

 ここまで書くともうお判りかもしれないが、この作品、中だるみがひどい。
 前半の設定がめちゃくちゃ面白いから、後半登場する対立組織の原理主義的なストイシズムはそんなの無理っしょ感がある。なぜなら交配を前提としない組織という存在を、自種にも他種にも、細胞原理で通常人間は理解できないからである。

 最後の方はほとんどメルカリを片手に鑑賞してしまったのでどういう感じだったかもう今となっては闇の中だが、前半の素晴らしさは間違いがない。婚活やら恋活やら合コンというシステムに対して悪意を剥き出しにして映画で抗議するその呪いの量は異常値に達している。しかしそこにアンチを張ってもやはりそれに回収されざるを得ない無間地獄を本作に見た。愛って怖いね。いやん。
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