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『ミュージアム』(64点/100点満点中)

 かつてゲイリー・オールドマンが言ってたと思うのだが、人間の喜怒哀楽の演技の中で最も表現が難しいのは、怒りの演技らしい。理由に彼が附言して曰く「怒るとはつまりいきなり爆発しなければならないからだ。いきなり爆発するにはちょっとした寿命を毎回犠牲にする必要があるから」などと語っていたのを何かの映像で見た事がある。確かに心当たりはある。喜怒哀楽の中で、怒るという動作は心的コストが一番高い。ハイリスクノーリターンであるからこそ、圧倒的な侵害行為であるからこそ、自他ともに迫真性はもちろんちゃんと正当性・急襲性を付加しなければならないということである。一瞬で怒らないといけない。怒ると決めないで怒る人も、怒ると決めて怒る人も、傍目からは一瞬で怒るのでやっぱり怖いのだ。

 本作は、小栗旬が怒って怒って怒りまくる映画である。
 罪状に合わせて私人が勝手な動機で私人を殺す映画『セヴン』が本作の創作根拠となりつつ、妻夫木聡がそんな和製の猟奇殺人犯を楽しそうに演じる。妻夫木聡は妻夫木聡に見えないくらい顔がグチャグチャの設定なのだが、幾ら顔をグチャグチャにしてもヘラヘラしてるとやっぱりシルエットが妻夫木としか言いようがなく、そのヘラヘラ感が今回墓石のように重苦しい小栗旬と良い対比になっている。
 そんな彼がどんな風に人を殺すかはもう予告編でガンガンやってしまっている。そもそも予告編の時点で悪役が妻夫木聡だと言う必要があったのかどうかすらも疑問だが、予告編でやってるということは、割とどうでもいいシークエンスなのだ。ばんばん殺すシークエンスは主に前半の前半の展開であり、本作の新規性は後半にある。

 後半の小栗旬が妻夫木聡に監禁され精神的に虐め抜かれるシーンは、『オールド・ボーイ』や『ホステル』やら『カジノ・ロワイヤル』を超えかねない拷問シーンだった。
 仕事優先で息子の誕生日も忘れ、妻子を実質的に捨てて生きてきたような男が、今や壁の向こう側の猟奇犯に妻子を誘拐され、その妻子が生きているかどうかもわからず、犯人お手製のなんだか牛肉で作られたとは思えない差し入れのハンバーガーにガツガツ食らいつくシーンを見れば、もうその日は絶対にハンバーガーを食べられなくなるし、そもそもマクドナルドとかに足を運ぶ体力すら奪われるくらいに疲れ切るほどの暗澹たるシーンである。
 小栗旬はもうどんどん怒る。顔を真っ赤にしたり真っ青にしたり真っ白にしたり真っ黒にして、やがて人間ではなくなっていく表情の変化は、人間国宝の伝統家芸のように軽妙かつ荘厳で、ところで僕は藤原竜也と小栗旬の声はそっくりだと思うのだけど、やっぱり藤原竜也が悲しさ(というか悲鳴)の表現が多彩なら、小栗旬は怒りの百貨店みたいですてきだなあと思う。

 猟奇殺人をテーマにした映画の評価、悪役の魅力とは右記のような単純式で評価しても良いと思う。即ち「殺し方の斬新さ+動機or出自の意味不明さ+特にそういうことをなんにもしてない時の高等遊民感+ルックスのキモさor洗練されてる感+反省のしてなさ+ちゃんと逮捕されず最後は逃亡できたかどうか」である。そういう指標で判断した時、本作の妻夫木聡君は、その最後以外は完璧ではないかと思った。
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