スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『シン・シティ』(97点/100点満点中)

 全く知らない街で体感治安最悪な景色を見ることは稀にある。そんな時は決まって「ゴッサム・シティみたいだなあ」と独り言してしまいそうになるし、実際そんな街に出くわした状況が満更でもないと私の中の少年がワクワクするのもまた事実である。キャッチに「お兄ちゃん、おっぱいは?」なんて聞かれた時は本当にびっくりした。おっぱいが耳の中でゲシュタルト崩壊するかと思ったくらいである。「あ、大丈夫です」なんて言うけど全然大丈夫じゃない。おっぱいについてはまったく平素から関心を寄せていないにも関わらず大丈夫じゃなくなったのである。全身黒色の服を着ていれば歌舞伎町の悪いキャッチのお兄さんにはまったく声を掛けられないと気づいたのは新宿に住み始めて一ヶ月経った時のことである。

 が、そんなやべえ街は実際には実在しない。

 そもそも架空のゴッサム・シティですら、すぐに善悪二項対立がどうのこうのと言い出す教育家である。アイアンマンもである。
 そんなのは要らんじゃねえか、男は女のために死ねばよし、と十年前に言い切ったのが俺たちの『シン・シティ』である。

 男は女のために死ね、というたった一行の美学が、一時間半程度の映像になっている。
 
 その思想は雑誌で言うなら『プレイボーイ』か『レオン』そのもの。
 みーんな女のために死ぬ。それでいて本作の女は弱くない。めっちゃ強いのである。

 そしてめっちゃ強い男がバンバン撃たれてバンバン殴られて、バキューンと死ぬ。あっ、オチ言っちゃったけど、オチなんざこの映画、どうでもいいくらい全編が良い。ハナから善悪がどうのこうのは言い出す気はまったくないその潔さ。その潔さを示すのはストーリーラインだけではない。

 映像美は僕がこれまで見た映画の中で飛び抜けて良い。全編白黒だ。
 血と女の唇にだけ赤が着色されている、超絞られた映像配色である。

 本作は好き嫌いを二分する映像美だとよく言われる映画だが、そもそもグロテスクは白と黒と赤さえあれば表現できるのであり、そして白と黒と赤だけでも映えるか映えないかという視点だけでキャスティングがなされた時、死ぬほど美しい女かめっちゃくちゃやさぐれた中年の男しか選ばれなかったという点、贅を極めると言っていい。そうだ。中年の男。もうなんにもすることがないから煙草と酒ばかりやって汚らしいオーバーコートを引きずりながら歩くような男が女のために死ぬ。矢沢永吉が実在の人物である、という事実より幸福な架空である。

 この映画の第二作では俺たちのエヴァグリーンが脱いで脱いで脱ぎまくるが、脱がんでええのに脱ぎまくった点は別途論じる必要があるものの、そんな中年の男たちが、ほら、俺、今から死ぬんだぜ、でも後悔はねえや、みたいなすんげえやべえナルシスティックでカッコいい台詞を連発して華々しく散っていく本作は俺が女なら上映中に100回くらいイッちゃったんじゃないかと思うほど上半身にも下半身にもギュンギュン来る映画なのである。

 なんにも言ってないに等しいレビューだが、なんかあんまり親しくなりたいと思えない人にめちゃくちゃ好きな映画なんだと言いながら本作を勧めるのがちょうどいいなとこの年齢になって気づいた。いや、ほんとに大好きなんだけどね。
スポンサーサイト

Profile

F

Author:F
Mail:gokushitekimovie@gmail.com

最新記事

検索フォーム

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。