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『ネオン・デーモン』(50点/100点満点中)

 公開初日の初回上映時に、そのシアタールームが満席かどうかでその映画への期待感が分かるだろうし、その席にいる人間たちの平均年齢が高ければ高いほど映画監督への信頼感が高いということが分かる。その点、本作は作品への期待も監督への信頼も非常に高いものだったのか、主人公は女の子の物語であり、しかもファッション業界の話であるのに、私の周りは私を含めて、大量のオッサンとオバサンばかりが肩狭しとTOHO新宿の中に並んでいた。
 主人公は十六歳の女の子。新人のファッションモデルとして、その自然体の美貌と純真さで彗星のように業界に現れ、瞬く間にメイク担当に気に入られ、エージェントに気に入られ、カメラマンに気に入られ、業界の重鎮に気に入られ、八頭身の完璧なベテランモデルたちを爪楊枝のように吹っ飛ばし、ロサンゼルスで一瞬にして頭角を表すその過程で、その内面の純真さをも喪失していく様子が、監督の気色悪いあの青と赤のアシッド演出の元、大量の血と死姦と食人シーンとレズビアンシーンを怒涛のごとく交えながら描かれ、観客全員をドン引きさせて唐突に終わる、この監督だから許される系統の映画が本作である。鑑賞後に頭痛、食欲の減退は必至であり、ついでに私の場合は頭痛が発熱するにまで至った。生理的には、最悪な印象の映画である。
 物語自体は洋製ヘルタースケルターとでもいうべきだが、本作の主人公は沢尻エリカと言うより水原希子である。
 整形なんて最初からする必要もなかった程の美人が、そういう業界に入った時、整形しまくってハートも顔面も彫刻のように人工美を極めた、それでも内面は獣のように狡猾な美人たちに囲まれた時、ただそこに彼女たちが対峙するだけで、どちらかが即時に暴力を引き起こさずにはおれない北野映画のようなあの暴力空間が、たとえばパウダールームやクラブのトイレやオーディション会場でひょんな会話から繰り広げられる、女同士の戦争を監督は嬉々として描いている。監督は女子校に入りたかったタイプの男の子であることに間違いないだろう。
 あくまで主人公は水原希子に置きながらも、服を買い換えるように整形し、それでもその努力が全くと言っていいほど裏目にでるモデルが、本作のかなり重要なプレイロールを担っている。
 骨を削り、肉を切り取る、という生理的恐怖に打ち勝ち、さらにはそのための投下資金を用意でき、その資金を倍々にして回収できる頭の良い人間のみが彼女たちのように整形できる。しかもそれを職にできる。しかしなにもしないでも美しい新人、ひいては若い子というものに対して、どう折り合いを付けるのかという諦観がそこに用意されていなかった時、これほどまでに激烈な行為に走るのか否か。
 その命題に対する説得力よりも、本作は相変わらず絵がグロテスクで美しく、監督にとっては筋だなんてものの優先順位は限りなく低いのだ。この映画は論理的に見るべきではない。そして論理を捨てて鑑賞するには、本作の場合、頭痛を避けては通れない。
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